認知症に備える 任意後見・死後事務委任と遺言

認知症は、だれにとっても身近なことです。認知症になっても自分らしく暮らし続けるために、「自分で決められる今」にしておける準備があります。判断する力が落ちてくると、遺言や契約など「自分で決める手続き」が難しくなることがあるからです。

このページでは、任意後見・死後事務委任・遺言・相続について、元気なうちにできることを、田川市の行政書士が順番にまとめました。

準備は「いつ」「なにを」

時期できること
元気なうち遺言を書く
任意後見の契約をする
見守り・亡くなったあとの事務を頼んでおく
判断する力が心配になったら契約していれば任意後見が始まる
契約の内容をまだ理解できるうちなら、今から任意後見の契約もできる
契約が難しければ法定後見(家庭裁判所が後見人などを選ぶ)
亡くなったあと遺言があれば遺言にそって手続き
なければ相続人全員で話し合い

任意後見と法定後見のちがい

成年後見(判断する力が十分でない方を、法律の面から支えるしくみ)には、元気なうちに自分で準備する「任意後見」と、判断する力が落ちてから家庭裁判所が後見人などを選ぶ「法定後見」の2種類があります。

任意後見(元気なうちに、自分で選ぶ)

  • 信頼できる人(ご家族・専門職など)と、どんなことを任せるかを決めて契約します。
  • 契約は公正証書(公証人が作る公文書)で作ります(公証役場の手数料が別にかかります)。
  • 判断する力が落ちたとき、ご本人・ご家族・任意後見を引き受けた人などが家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が「任意後見監督人」(後見人の仕事を監督する人)を選ぶと、任意後見が始まります。
  • 任意後見の契約をしておくと、原則として法定後見より任意後見が優先されます。

法定後見(判断する力が落ちてから、家庭裁判所が選ぶ)

  • ご家族などが家庭裁判所に申し立て、家庭裁判所が後見人などを選びます。
  • だれが選ばれるかは家庭裁判所が決めます。
  • 申立ての書類の作成は、司法書士・弁護士の業務です。当事務所では制度のご説明をし、必要に応じて連携する司法書士におつなぎします。
  • 田川市にお住まいの方は、田川市成年後見相談サポート室(田川市役所内)でも相談できます。電話は、65歳以上の方が0947-85-7129、65歳未満の方が0947-85-7130です。

ちがいは「だれが選ぶか」

任意後見法定後見
始める時期元気なうちに契約判断する力が落ちてから申立て
だれを選ぶか自分で選ぶ家庭裁判所が選ぶ
任せる内容契約で決める法律と家庭裁判所の判断で決まる

任意後見のデメリットと、できないこと

任意後見は「自分で選べる」しくみですが、次の点もあわせて知っておいてください。

  • 契約の内容を理解して決められないほど判断する力が落ちてからでは、契約を結べません。早めの準備が大切です。
  • 任意後見が始まると、任意後見監督人の報酬がかかります。額は家庭裁判所が決め、ご本人の財産から支払います。
  • 任意後見人には「取消権」がありません。ご本人が自分で結んでしまった契約を、あとから取り消す権限はないため、見守りや周りの方の気づきと組み合わせて備えます。
  • ご本人が亡くなると、任意後見は終わります。葬儀や納骨など亡くなったあとの事務は、死後事務委任で別に頼んでおきます。
  • 医療への同意・身元保証・介護そのものは、任意後見人の仕事に含まれないと考えられています。手術などへの同意、入院・入所のときの身元保証人(入院費などの支払いを保証したり、緊急時の連絡先になったりする人)、身の回りのお世話がこれに当たります。ご家族などと、早めに話し合っておくことが大切です。

こうした点を踏まえて、ご本人の暮らしに合わせ、見守り・任意後見・死後事務・遺言を組み合わせます。

見守り契約・任意後見・死後事務委任の3点セット

ひとり暮らしの方、お子さんがいない方、ご家族が遠くにいる方には、次の3つを組み合わせる形をおすすめしています。

  1. 見守り契約(元気なうちから)——定期的にお会いして見守り、手続きやお金の管理をお手伝いします(「生前事務委任」ともいいます)。
  2. 任意後見(判断する力が落ちたら)——財産の管理や契約を代わりに行います。
  3. 死後事務委任(亡くなったあと)——葬儀・納骨・役所の届出・片付けの手配など、亡くなったあとの事務を行います。

まずはお話をうかがうところから始めます。何回かお会いしながら、ご希望に合わせて形を決めていきます。

任意後見契約の3つの形

形内容向いている方
将来型任意後見の契約だけを結び、判断する力が落ちたときから始めます今は元気で、近くに見守ってくれるご家族がいる方
移行型見守りとお金の管理などを頼む契約(生前事務委任)を同時に結び、判断する力が落ちたら任意後見へ移りますひとり暮らしの方、ご家族が遠くにいる方(上の3点セットは、この形に死後事務委任を加えたものです)
即効型契約を結んだあと、すぐに家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申し立てて始めます判断する力に少し不安が出てきたものの、契約の内容は理解できる方

遺言は「判断する力があるうちに」

  • だれに・何を遺すかを決めておくと、残されたご家族の話し合いの負担が軽くなります。
  • 遺言には、ご自分で書く「自筆証書遺言」と、公証人が作る「公正証書遺言」があります。
  • 公正証書遺言は、公証人がご本人の意思を確かめて作ります。原本は公証人の側で保管されるため、なくす心配がありません。原案づくりから公証役場との調整、証人の手配まで、当事務所でお手伝いします。
  • 自筆証書遺言を法務局に預ける制度があります(手数料3,900円)。なくしたり書き換えられたりする心配が減り、亡くなったあとの家庭裁判所の「検認」(遺言書の状態を確かめる手続き)も要りません。
  • 預けるときに希望すれば、亡くなったあと、指定した方(3人まで)へ法務局から通知が届きます。
  • どちらも、判断する力が十分なうちに作ることが大切です。
  • 作り方のくわしい比べ方は、遺言書の作り方|自筆証書と公正証書の違いのページをご覧ください。

出典:法務省「自筆証書遺言書保管制度」/法務省(手数料)

相続で困らないために

  • 遺言がなければ、相続人全員で話し合って分け方を決めます(遺産分割協議)。
  • 相続人の中に判断する力が十分でない方がいると、そのままでは話し合いができず、成年後見の手続きが必要になることがあります。
  • 土地・建物を相続したら、相続登記(不動産の名義を相続人へ変える手続き)が義務です(相続で取得したと知った日から3年以内)。登記の手続きは連携する司法書士がお受けします。
  • 田川市・田川郡での手続き先は、田川市・田川郡の相続手続き|どこの窓口へ行けばよいかにまとめています。相続の流れと費用は相続手続きの流れと費用|田川市・田川郡をご覧ください。

出典:法務省「相続登記の申請義務化について」

法律が変わります(令和8年6月成立)

  • 令和8年6月、成年後見と遺言のしくみを見直す法律が成立しました(令和8年法律第45号・6月24日公布)。
  • 今の法定後見は、判断する力の程度に応じて「後見・保佐・補助」の3つに分かれています。これが「補助」1つにまとめられ、ご本人にとって必要な範囲で使えるしくみに見直されます。
  • 変わる時期は、成年後見の見直しが公布から2年6か月以内、自筆の遺言に印鑑を押さなくてもよくなる見直しなどが1年以内とされています。具体的な日付は、これから決まります。
  • それまでは、このページに書いた今の制度で手続きします。最新の内容はご相談のときにご説明します。

出典:法務省「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について

ご依頼の例

ご依頼の一部を、個人が特定されない形でご紹介します。

  • ご高齢の方の任意後見と亡くなったあとの事務(筑豊)——ご家族が遠くにお住まいの方と、見守り契約・任意後見契約・死後事務委任契約の3つを公正証書で結びました。契約のあとも、定期的にお会いして見守りを続けています。

相続・遺言のご依頼の例は、相続・遺言のご相談のページでもご紹介しています。

こんな方は、元気なうちにご相談ください

  • 子どもがいない・おひとりさま
  • 家や土地を持っている(田舎の土地・空き家も)
  • 再婚している・前の配偶者との子がいる
  • 家族以外の人(お世話になった人・団体など)に財産を遺したい
  • 家族に、認知症や障がいで手続きが難しい人がいる
  • 入院・入所のとき、お金の管理をだれに頼むか決まっていない
  • 亡くなったあとの葬儀・納骨・片付けを頼める人がいない
  • 親の家や土地の名義が、亡くなった人のままになっている

よくある質問

Q. 任意後見のデメリットは何ですか?

主に次の4つです。契約の内容を理解して決められないほど判断する力が落ちてからでは、契約を結べません。任意後見が始まると、任意後見監督人の報酬がかかります(額は家庭裁判所が決めます)。任意後見人には、ご本人が結んだ契約をあとから取り消す権限(取消権)がありません。ご本人が亡くなると、任意後見は終わります。くわしくは、このページの「任意後見のデメリットと、できないこと」をご覧ください。

Q. 認知症と診断されたら、もう遺言は書けませんか?

診断を受けたことだけで、すぐに書けなくなるわけではありません。ただし、遺言を書くときには、内容を理解して判断できる力が必要です(民法第963条)。あとで有効かどうかの争いになりにくいよう、できるだけ早めに準備することをおすすめしています。公証人がご本人の意思を確かめて作る公正証書遺言も、ご検討ください。なお、法定後見のうち「後見」を受けている方は、判断する力が一時的に戻ったときに、医師2人以上の立会いのもとで遺言をする決まりがあります(民法第973条)。

Q. 任意後見の契約は、自分でできますか?

はい、できます。任意後見の契約は公正証書で作ると法律で決まっているため(任意後見契約に関する法律第3条)、公証役場に相談して作ります。当事務所では、ご希望の聞き取りから原案づくり、公証役場との調整までお手伝いします。

Q. 任意後見人には、だれがなれますか?

ご家族や信頼できる知人のほか、行政書士などの専門職や法人に頼むこともできます。だれに何を任せるかは、ご本人が契約で決めます。

Q. 任意後見人に頼めないことはありますか?

手術などの医療への同意、入院・入所のときの身元保証人、介護そのもの(身の回りのお世話)は、任意後見人の仕事に含まれないと考えられています。任意後見人が行うのは、財産の管理と、介護サービスや施設入所などの契約の手続きです。

Q. 任意後見と死後事務委任は、両方必要ですか?

任意後見は、ご本人が亡くなると終わります。葬儀・納骨・役所の届出・片付けの手配など、亡くなったあとの事務を頼んでおきたい場合は、死後事務委任の契約を別に結びます。財産をだれに遺すかは、遺言で決めます。

Q. 死後事務は、だれに頼めますか?

ご家族や知人のほか、行政書士などの専門職や法人に頼むこともできます。頼む内容と、費用の払い方を契約で決めておきます。

Q. 費用はどのくらいかかりますか?

主に3つあります。公正証書を作るときの公証役場の手数料、専門職に頼む場合の報酬、任意後見が始まってからの任意後見監督人の報酬(額は家庭裁判所が決めます)です。当事務所の報酬は、ご希望をうかがったうえで、着手前にお見積りでご提示します。初回30分のご相談は無料です。

料金

  • ご相談:初回30分は無料です。30分を超えてくわしくうかがう場合は、5,000円/回(税込・時間は無制限)
  • 出張相談:10,000円/回(税込・時間は無制限。筑豊エリア以外は別途交通費をいただく場合があります)
  • 書類作成の報酬:内容により個別にお見積りします(遺言の報酬はサービス・料金をご覧ください)
  • 見守り契約・任意後見・死後事務委任をお引き受けする場合の報酬も、着手前にお見積りでご提示します
  • 公証役場の手数料・戸籍などの実費は別にかかります

当事務所でお受けすること・連携すること

  • お受けすること——遺言書の原案作成/公正証書遺言の手続き(公証役場との調整・証人)/任意後見契約の原案作成と公証役場との調整/任意後見人・見守り・死後事務のお引き受け/相続人の調査・相続関係説明図・遺産分割協議書の作成
  • 連携してご案内すること——登記は司法書士、税務は税理士、争いのある案件は弁護士(当事務所では取り扱いません)。法定後見の申立書類の作成は司法書士・弁護士の業務です。ご依頼・お支払いは各専門家へ直接となり、紹介料のやり取りはありません。

対応エリア(田川市・田川郡を中心に筑豊全域)

田川市、田川郡(香春町・添田町・糸田町・川崎町・大任町・福智町・赤村)を中心に、飯塚市・嘉麻市・直方市・宮若市・鞍手郡などの筑豊地区、および福岡県全域に対応します。ご来所が難しい方には、ご自宅などへの出張相談も行っています(筑豊エリア以外は別途交通費をいただく場合があります)。

公正証書は、お近くでは田川公証役場(田川市千代町)で作ることができます。法定後見の申立てや、任意後見を始めるための申立ては、ご本人のお住まいの地域の家庭裁判所に出します。田川市・田川郡の方は、福岡家庭裁判所 田川支部です。ご本人・ご家族が申し立てる書類の作成は、司法書士・弁護士の業務です。

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